地球温暖化対策への取り組みは、いわゆる重厚長大の業界企業から始まり、近年では一般の製造業や小売業や金融業まで広がりを見せています。
その中で以前から感じていることは、地球温暖化の影響を最もダイレクトに受けやすい業界は、農林水産業ではないか、というものです。特にフードバリューチェーンを考えた時、平均気温の上昇によりこれまで作物が収穫できた土地で収穫ができなくなる(北の方へ移る)、海洋の酸性化によって、漁獲量が減少する、などが代表的な例です。また、外気温の上昇は、物流拠点での冷凍冷蔵に必要なエネルギーが増加し、物流コストの上昇を引き起こす、といった影響も容易に想定できます。
一部の先進的な企業では、このような影響の分析や対策の検討が進められていますが、農林水産業界全体では、他業界に比べると、若干出遅れ感があるように感じます。
このような中、農林水産省において「フードサプライチェーンにおける脱炭素化の実践とその可視化の在り方検討会」が設けられ、先6月には、サプライチェーンの各段階における重要な課題、事業インパクトを例示した手引書・ガイドラインが公表されました。
「フードサプライチェーンにおける脱炭素化の実践とその可視化の在り方検討会」
https://www.maff.go.jp/j/kanbo/kankyo/seisaku/climate/visual.html
手引書としては、以下の3種類があり、それぞれかなりのボリュームがありますが、温暖化対策のいろはから解説されており、また、具体的な対応策の例示も掲載され、初心者からベテランまで非常に参考になるものと思います。
①食料・農林水産業の気候関連リスク・機会に関する情報開示(入門編)
https://www.maff.go.jp/j/kanbo/kankyo/seisaku/climate/attach/pdf/visual-89.pdf
②食料・農林水産業の気候関連リスク・機会に関する情報開示(実践編)
https://www.maff.go.jp/j/kanbo/kankyo/seisaku/climate/attach/pdf/visual-96.pdf
③フードサプライチェーンにおける脱炭素化技術・可視化(見える化)に関する紹介資料【第2版】
https://www.maff.go.jp/j/kanbo/kankyo/seisaku/climate/attach/pdf/visual-97.pdf
気候関連リスクは食料のサプライチェーン広範に影響を及ぼす可能性があり、事前の対応策の検討が必要です。
①では、サプライチェーン上どのようなリスクや機会があるについて説明されており、②では、そのリスクや機会が事業にどのような影響を与えるのか、また、その対応策をどう検討すればよいか、について解説されています。
③は、脱炭素化を実践する農林漁業者、サプライチェーン全体で脱炭素化に取り組む食品事業者の環境対策・リスク管理を担当する実務者等を想定して作成されています。掲載されている脱炭素化技術の一覧(ロングリスト)とそのリストには、技術の実証や普及、排出削減・吸収した温室効果ガスの定量評価等が進められている農業生産現場や流通段階における脱炭素化技術が説明されています。
どの資料もボリュームがあり、隅から隅まで読む必要はないと思いますが、手元に置いておき、必要に応じて参照するといった使い方が良いと思います。
次回以降のブログでは、各資料の内容について補足説明をしてみたいと思います。