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CIX:シンガポールのカーボン取引市場について

2021年06月28日

2021年5月、DBS銀行、シンガポール証券取引所(SGX)、スタンダードチャータード銀行およびテマセック銀行が、Climate Impact X(CIX)という国際的なカーボンクレジット取引市場を開設すると発表しました。
(https://www.climateimpactx.com/)

CIXは、衛星監視、機械学習、ブロックチェーンなどの技術を活用して、カーボンクレジットの透明性、整合性、高品質を担保したグローバルな取引市場になることを目指しているようです。

機能としては大きく2つあり、一つは適格なクレジットの売買をスムーズに行うための価格シグナルの提供、もう一つは森林保全や自然保護のプロジェクトを中心とした高品質・低リスクのプロジェクト情報の提供です。


価格情報提供のイメージ図(出典:CIXウェブサイト)


プロジェクト情報提供のイメージ図(出典:CIXウェブサイト)

CIXの特に興味深い点は、取引においてNatural Climate Solutions (NCS)に重点を置いていることです。NCSとは、森林、農地、沿岸部の生態系を健全な状態に管理、保護、復元することによって、気候変動を防ぐという考えに基づくプロジェクト実施です。(https://www.naturalclimate.solutions/)

現在、農業や林業、土地利用の変化に伴う温室効果ガスの排出量は、世界全体の25%と試算されており、平均気温上昇を2℃や1.5℃に抑えるためには、NCSが大きな鍵を握っています。

またCIXは、TSVCM(※1)やNatural Climate Solutions Alliance(※2)と協力して、品質や整合の取れたクレジット取引の標準を構築するということを謳っており、今後本格的にクレジット取引が世界で行われる際に、良質で裏付けのあるクレジットが取引されることを企図しています。

シンガポール自体のCO2排出量は年間6000万トン程度で、日本の20分の1、世界全体から見ると0.1%にも満たない量ですが、クレジット取引というビジネスにおいては、これまで同様、国際的なハブステーションとしての位置付けを目指しているようです。

日本でもカーボンプライシングの導入の議論が活発化していますが、引き続き注視していく必要がありそうです。

※1 TSVCM…「自発的炭素市場拡大に関するタスクフォース」。元イングランド銀行総裁のマーク・カーニー国連気候アクション特使により、2020年9月に発足したイニシアティブ。気温上昇を1.5℃に抑えるために、二酸化炭素排出量取引市場を大規模に実効性を持たせて実施することにより、削減技術への投資が進み、効果的な削減が進むとの主張をしている。

※2 Natural Climate Solutions Alliance…NCSの経済的価値を明らかにし、資金を呼び込むために、世界経済フォーラム(WEF)と持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)とによって運営されているアライアンス。